アンフィニッシュト・ブルー(旧題 後宮)
26



モーニングのお客を送り出すと、もう時刻は昼近い。
お客が帰った店の中から、私は表通りを眺めた。


平日の昼前ということで近所の小さな信用金庫で働く女性たちが財布をもってランチを買いに出かける。彼女らが向かうのは金物屋だったお店の跡地にできたパスタの店だ。
いつも陽気で数人ずつ固まって行動するカガン人たちの姿は最近ほとんど見かけない。

うちの店はモーニングのお客を送り出したあと、すっかり暇になってしまった。ランチのためにうちの店にやってくるお客はほとんどいない。店の売り上げは以前の三分の二にまで落ち込んでいた。



ミハイルがカガンに帰ったことに伴い、カガン公邸に常駐している職員はほとんどが帰国していった。その影響で店に来るカガン人の数はさらに少なくなった。

そして私がホテルに避難していた間の閉店期間で、さらに客足は遠のいた。
うちの店にくることを日課にしていたランチのお客は新しくできたイタリアンの店に流れてしまったようだ。

カガンからの休業補償はあるけれど、この状態ではそれもすぐに底をつくことだろう。


もう潮時かもしれない。
そんな言葉が何度も頭をよぎった。

けれど、店を閉めたとして、私はどうやって生きていくのだろう。

就職する?
どこに。


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