アンフィニッシュト・ブルー(旧題 後宮)
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並べたプラスチックの折箱に、花形に抜いたご飯を詰めていく。
九時ごろからモーニングやコーヒーを楽しんでいるお客さんたちの接客をしながらの作業なのでなかなか進まない。その上、今頃気がついたのだが、どうも私は器用なほうではないらしい。
「そっち終わりましたか、次、ニンジン!」
「ま、待って。まだ」
次の仕事が決まるまでという約束で私の店を手伝ってくれている鈴村くんが私の手元をのぞきこみ、そして眉をひそめた。
職業柄仕方のないことなのかもしれないが、彼はランチタイムが近づけば近づくほど言葉と態度が荒くなる。
「なにやってんの、今11時半っすよ」
「ごめん!もう少し、2分で終わるから」
押し付けるようにして渡されたバットの中には梅型に切ったニンジンが入っていた。これをすべて折箱に飾っていかなければいけない。
鈴村君はチッと舌打ちをして私が詰めきれなかったご飯をまだ空っぽの折箱に詰めはじめた。
彼はさすがに京都で修行していただけあって手際がいい。