アンフィニッシュト・ブルー(旧題 後宮)
それから一週間が過ぎた。
私にとって王子がいたあの夜はまるで夢の中の出来事のように非現実的で、時間がたつにつれ現実味が薄れていった。
やがていつもの朝といつもの店、毎日繰り返される私の仕事がまた私の世界のすべてになり、私とカガンの接点は再び店の客との会話とテレビから入ってくる報道だけになった。
カガンティーを目当てにうちの店に通ってくれていたカガン人たちは帰国してしまったのか、それとも今は優雅にお茶を飲んでいる場合ではなくなったのか、ぱったりと店にこなくなってしまった。
自分に出来ることはもうない。
そうは思いつつも、怪我をして高熱を出していた王子がどうなったのか。これからカガンはどうなるのか。
なんとなくざわざわと落ち着かない気持ちを抱えたまま、いつもの単調な日々が過ぎていった。