アンフィニッシュト・ブルー(旧題 後宮)
その後はなんとなく父親の店を手伝いながら、時々店が休みのときは単発の派遣の仕事をこなしつつ生活してきた。
今の生活に不満があるわけではないけれど、店に置いてある女性誌をぱらぱらとめくったときや、テレビに映る女性アナウンサーを見た時、この人たちは一体どんな努力をしてあの生活を手に入れたのだろう、と考えてみることはある。
私は嫉妬と後悔の入り混じった視線を女性アナウンサーが朗らかに喋りながら街頭インタビューをしている映像に向けた。
このアナウンサーさんの親は娘が誇らしいだろうか。
すでに数年前に死んでしまった私の父は職人気質で無口だったから、叱言(こごと)らしい事を言うことはほとんどなかった。
そんな父は何一つやり遂げることのできない娘を内心どう思っていたのだろうか……。
私はこれまで全く努力らしいことをしないまま生きてきた。
今は父が残してくれた自宅兼店舗で店を続けながら暮らしている。家も店もお客さんもレシピも親が残してくれたもので、私が自分の手で掴(つか)み取ったものは何一つない。何かを熱望したこともない。
なりたいものややりたいことに情熱を傾ける人たちは、どんな気持ちで毎日を過ごしているのだろう。
「やめよう」
私はため息をついてテレビを消した。