アンフィニッシュト・ブルー(旧題 後宮)
「窮鳥懐にいらずんば……猟師も、なんだっけ」
正しくは窮鳥懐に入れば猟師もこれを殺さず、つまり逃げ場を失った鳥が助けを求めたら、鳥を撃つのが仕事である猟師だって鳥を哀れんで殺したりはしない。そういうことを言いたかった。
彼に伝えるというよりは自分に言い聞かせるような気持ちでそう口にした。
とにかく私は王子を保護することに決めた。少なくとも今は。
私より一回りくらい若い学生が困っているのがわかっていて見捨てることなどできない。
今までカガン人はうちの店を支えてくれた。それはつまり彼らが私や父の生活を支えていたという事だ。
クーデターが起こったからといって、私は彼を切り捨てられない。父だってきっと同じ事を言ったと思う。
少し不安だったけれど、「見捨てることのほうが難しい」ことってあるものだ。
そう思った。