アンフィニッシュト・ブルー(旧題 後宮)

彼と私の「いただきます」の言葉が重なり、私達はニュースに耳を傾けながら食後のお茶を淹れた。
温泉に浸かるサルのニュースにふっと笑みを浮かべる私と「サルの浸かった湯に人間も入るのかな」と眉根を寄せる王子。
サルの浸かった温泉に人間もいっしょに入るのかどうか、一度も考えた事がなかった。だから私は「んっ、」と言葉に詰まった。

「さあ……どうなのかな」

「日本人は清潔を好む民族と聞いていたので」

「清潔が好き、なのかな。
日本は昔から水資源が豊富だったからお風呂は毎日はいるけど、環境がそうさせただけじゃないかな……。どこの国の人でも毎日お風呂に入れる環境があるなら入りたいと思うんじゃない?」

「そう、……あなた、面白い方だ」


私は人から「面白い」といわれたのは初めてなので眉をあげた。私はどちらかといえば面白みのない人間だと思っていた。


「……失礼、funnyやamusingと言いたいのではなく、interestingという意味で」


私は英語が得意なわけではないのでfunnyやamusingとinterestingの正確な違いはわからない。でも、王子が悪い意味で私を面白いといっているのではなさそうだとほっとした。


王子はどこからどう見ても教養のある豊かな育ちの人に見えるが、私はそうではない。教養とは無縁の人間だ。
だから王子のような人に突然「面白い」と言われると、つい何か変なことを言ったのだろうかと不安にさせられてしまう。

王子は私の感じた不安には気付かず、話を続けた。

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