理由



私はCDケースの山を崩して、俯せで倒れていた。
体を持ち上げると、額が痛かった。ケースで打ったか切ったかしたようだ。

私はそこで気付いた。あ、今は夢の中だな、と。

なんとなく景色がぶれているのは、気絶したせいではないだろう。
全てがパステルカラーなのは、夢だからだ。

早く目を覚まさなきゃと焦った。
前に貧血で気絶した時は、見事に失禁していたからだ。
年末大掃除の、掃除するところを増やしていたんじゃ仕方ない。

早く起きろ早く起きろと意識を集中させようとするが、さすがは朦朧とした夢の世界。集中したそばから違う事を考えている。
つまり、全く集中なんてできていないわけだ。

今、集中しようと同時に何を考えていただろうか。

「夕飯は、孝利が好きなおそばにしよう。天ぷらも揚げようか。」だ。

私が孝利に夕飯を作るわけがないじゃないか、孝利はうちには来ないのだから。

混濁している。なんとかして目を覚まさないと。
しかし、次第に意識はその混濁したほうへと流されていった。

ああ、孝利が帰って来る前に、夕飯を作らなきゃ。

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