理由
孝利に、大好きだと言うのはしょっちゅうだけど、愛してると言った事はない。

孝利に大好きと言われた事はあっても、愛してると言われた事はない。

これは変じゃないかと、自分でもちょっと思う。
ドラマや映画みたいに、愛してると言い合うのが普通のカップルなのだと思う。

一度ホテルの出口で、酔っ払った女の人が彼氏に抱き着いて、愛してると連呼している場面に出くわした事がある。

びっくりしたし、嫌悪さえした。でも、ほんの少し、ほんの少しだけ、うらやましいと、確かに感じた。

それでも私は愛してると言わないし、孝利も言わない。

じゃあ愛していないのかと言われたら、愛していると思う。ただ、多分愛している。

「愛している」って、どんな気持ちなんだろう。それがハッキリしない。
どんな本を読んでも、しっかり明記してはいない。

だから私は、愛してるとは言わない。
孝利がどうして言わないのかは知らないが。

多分、彼の事だから、私が言わないから言わないんだろう。
私が言ったら言うんじゃないか。


あるいは、孝利は私の事を愛していないのか。



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