親友の死、コトバは罪より重い(アメリカイヌホオズキ)
同日 十六時四十五分
* *
マンションに着き、雪村先生から教えてもらった215号室へと足を進めた。
加藤さんは私と会ってくれるだろうか?何もしてないからこそ憎まれる事もある。
「ここだ…」
インターホンを押すと加藤さんのお母さんが出てくれた。
「初めまして。クラスメイトの日比野翔子です。宿題を届けにきました」
「こちらこそ初めまして。夏希の母です。ありがとう日比野さん」
宿題を渡すとお礼を言われたけど
お礼なんて言われる立場じゃない。
私は自分の情けなさに腹が立ち制服のスカートを握りしめた。
「あの、夏希ちゃんには会えますか?話したい事があるんですが…」
「わざわざ来てくれたのに、ごめんなさいね。クラスメイトが立て続けに亡くなってショックを受けているみたいだから今はそっとしておいてほしいの」
嘘だ。
加藤さんはお母さんに嘘を話している。
いじめの事を聞いていないんだ。
「雪村先生から連絡があったりしますか?」
「えぇ、あるわ」
連絡は一応あるらしい。
でも受験についての話ばかりだそうだ。
そんな時期だから誰も疑問には思わないけれど、加藤さんの本当の欠席理由が予測できる私には違和感しかなかった。
「夏希に何か伝言でもあるかしら?」
「それじゃあ、“学校で待ってる”とお伝え下さい」
加藤さんのお母様にお辞儀をして私はマンションを出た。
「会えなかった…」
可能性は低いとは思っていたけど、やっぱり会って話したかった。そして謝りたかった。今更許されないのはわかってるけど。
そんな事を考えながら歩いていたから前から歩いてくる人に気づかなかったんだろう。
「うわっ!」
「きゃっ!」
ドンッ!と見事にぶつかった。
「ご、ごめんなさい!!」
「いや、こちらこそ…って日比野かよ」
「え?」
顔を上げると、どうやらぶつかった相手はクラスメイトの山本くんだった。