親友の死、コトバは罪より重い(アメリカイヌホオズキ)
梶谷さんは、けして表情は笑顔ってわけではなかった。真顔ってわけでもないし、かと言って冷めてるわけでもない。
心ここに在らず…って言うのかな
私は何も言えず、ただ息を呑んだ。
「沙耶にはね彼氏がいるのよ」
「えっ…沙耶って彼氏いたの?」
「まぁね。だけど沙耶はもういないから彼氏だった…の過去形になってしまうけど」
女子は恋バナが大好きで誰かがその話をしていたら次から次へと人が増えていき盛り上がっていく。
沙耶は話には参加していたけど彼氏がいるなんて言ってなかった。
「彼氏ってクラスメイト?それとも他校の人?」
「もちろん貴女のクラスメイトよ」
全く気づかなかった…
なら、彼氏さんも沙耶を殺した犯人の事を梶谷さんと同じぐらい憎んでるんじゃ…
「私ね、彼から貴女達の様子を定期的に聞いていたの。彼も私と同じように犯人が許せないから」
「そう、だよね」
犯人が許せない…
それなら彼氏さんは犯人を知ってる?
連絡を取り合ってたって事は知ってないと出来ない事だよね?
「もうわかると思うけれど彼も犯人が誰か知ってるよ。彼は彼なりに復讐するみたい」
「そんな…」
彼なりにって、卒業までに復讐を果たそうとするって事だよね?
だって高校生になったらバラバラになるわけだからチャンスは卒業まで。
「沙耶に彼氏がいたなんて意外だった?貴女に気づかれていないようで良かった」
梶谷さんの一つ一つの言葉が重く私の背中にのしかかる。
言葉が、重たい。
「彼がどのように復讐するかは私にはわからないわ。止めたいなら貴女の頭脳で彼氏を見つけて説得する事ね」
「そんなの…誰が沙耶の彼氏かなんてわからないよ」
「そうかもね。でも彼は私以上に憎んでいるから気をつけてね、偽善者さん」
「え…?」
一瞬だけ時が止まったかのように体が動かなかった。
カフェには私や梶谷さん以外にもお客さんがいるのに、まるで二人だけの冷たい空間にいるかのようだった。
そして鋭い針で刺されたような感覚にも囚われ表情を歪めてしまう。