家政婦だって、恋したい
予兆
―結衣side―
碧斗さんが部屋に行ってしまって、かれこれ2時間くらいが過ぎた。
私は、ダークブラウンの高そうなレザーソファに腰掛けながら、先程の出来事を反芻していた。
「私の怒ってる顔を見て笑うなんて、腹立つーっ!!!」
ソファに置いてあった、無地のベージュのクッションを掴んで、思い切りソファに叩きつけた。
『俺に惚れたら即解雇』
そう言った碧斗さんの瞳は光を失い、どこか遠くを見つめているような表情で、正直怖かった…
ああ言われた以上、玉の輿に乗るなんてもっての他。
私は、終わることのない、父の借金を思い出して、大きな溜息を吐く。