家政婦だって、恋したい
チェックアウトの時間を過ぎた、午前11時過ぎ。
「碧斗くん、拓哉くん、本当に金麗花をこんな素敵な旅館に蘇らせてくれてありがとう。…感謝してもしきれないよ。」
他のお客を見送り、
最後に俺たちを見送る麗奈の父、支配人の俊晴(としはる)さんが、涙ぐんだ表情で俺の手を握ってきた。
「いいんですよ俊晴さん。父も同じ事をしたと思います。」
俺は少し強く握られた手を見つめて、にこやかに微笑む。
「…ありがとう。本当に立派になったね。」
そう言って俊晴さんは、俺の手をゆっくり離した。
「…ところで、麗奈は?」
さっきから麗奈の姿が見当たらない。
いつもなら、俺たちが帰る時はどんなに忙しくても必ず見送るのに。