家政婦だって、恋したい
「…泰子さん、お父さんは?」
結衣は、父の姿を見つけようと、あたりをキョロキョロと見渡している。
「あぁ、信(のぶ)くんなら、縁側でお父さんと将棋してるんじゃないかな?」
「そっか。ごめんね…父の面倒見てもらってしまって…」
「そんなのいいのよ。結衣ちゃんも佑真くんも大変なんだから、気にしないで。ほら、私ってお父さんとは幼馴染でしょう?だから、弟の信くんの事も小さい時から知ってるし、全然大丈夫よ。」
「本当にありがとう…ちょっとお父さんのところに行ってくるね。」
そう言うと、結衣は部屋の奥へと進んでいった。
一人取り残された俺は、隣に立っている佑真を見遣る。
「…何?」
「お前は行かないのか?お父さんのところ。」
「あぁ、後で行くよ。それよりも腹が減ってこっちの方が気になる。」
そういう佑真は、目の前の御馳走を顎で指す。
「そうね、結衣ちゃんには悪いけど、先に頂いちゃいましょう!」
俺たちの話を聞いていた泰子さんが、皿に料理を取り分けてくれた。