家政婦だって、恋したい
結衣の母親と祖父が眠るお墓は家から徒歩5分ほどの距離にあって、
その道中、お互い何を話すでもなく墓前に着いた。
「…お母さん、お祖父ちゃん、遅くなってごめんね。」
墓の前で花を供える結衣は、亡き2人に語りかけていた。
「お父さん、大分元気になってたよ。お母さんたちが傍に居てくれているからだね。ありがとう。」
そう言うと、結衣は蝋燭に火を点けて蝋燭立てに置く。
「あ、紹介するね。こちら藤崎碧斗さん。私、碧斗さんの家で家政婦とし働かせて頂いてるの。あとね、ゆうくんも4月から碧斗さんの会社で働かせてもらうことになってるし、今日だって碧斗さんがお母さんたちに会わせてくださって…私たち、本当にお世話になっている人なんだ。」
俺は黙って結衣を見つめていた。
結衣が線香に火を点け立てかけた後に手を合わせたので、俺も一緒に手を合わせた。