家政婦だって、恋したい

「お前、なに人ん家に勝手に置いてんだよ。」
「そんなケチケチしないの!いいじゃない広いんだし。」

(・・・コイツに何言っても無駄だな。)
俺はもう、話が通じない相手に無駄な体力を使う事を諦め、深く溜息を吐いてカウンターチェアに腰かけた。

「碧斗さんすみません、夕食もう少し掛かりそうです。出来た物だけで先に召し上がりますか?」
緑花にイライラしている俺の様子を伺いながら、結衣が話し掛けてきた。

「碧兄ダメよ!皆んなで食べるのよ!先に食べるのは許さないからね!」
(いやいや、お前の許可とかいらねぇし。)
ツッコミたいのを抑え、ツリーに向き直った緑花を睨みつけて、俺は大きく溜息を吐いた。
「碧斗さん。」
緑花に聞かれないよう、小声で話し掛けてきた結衣が、そっと俺の前にクッキーとコーヒーを置いてきた。
「こんな物で申し訳ないですけど、小腹は満たされるかなぁと思いまして。」
シッと口に人差し指を立てて笑う結衣に、ドキッと胸が高鳴った。



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