家政婦だって、恋したい


緑花が言うことは分かる。

どうせ叶わない恋。

玉の輿も狙えない、
借金の返済の兆しも見えない今の状況。

別の人を探した方が良いって、自分でも分かっているし、
掛け持ちも考えないと。と、ずっと思っていた。


「でも、どうやって諦めたらいいか分からないの。」

私は、ずっと打ち明けたかった行き場の無い想いを、初めて緑花に伝える。

「毎日顔を合わす度、私の料理を美味しいって言ってもらえる度に、どんどん好きになっていくの。
『私は家政婦』って何度も言い聞かせてるけど、気持ちが止まらない。
どうしたらいいのか分からないの。」
全部を言い終わらない内に、目から段々涙が溢れてきた。

緑花は、涙声で最後の方は聞き取り辛かったと思う私の言葉も、
最後まで真剣に聞いてくれた。


「玉の輿なんて夢を見たから、バチが当たったのよ・・・楽してお金なんか得ようとするから・・・」
ぐずっと鼻水を啜ると、緑花がテーブルにあったティッシュをくれた。



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