家政婦だって、恋したい
「あれ、碧斗さん。お久しぶりですね。」
とあるホテルの最上階。
昔は1週間に1回、しかも決まって週末に訪れていた。
「…シン、いつもの頼む。」
「え!?でも、明日は平日ですよ…?」
「いいからよこせ。」
次の日に仕事がある時は絶対頼む筈のない酒を頼むと、シンは心底驚いていた。
「…どうぞ。」
俺はシンから差し出された酒を受け取り、一気に飲み干す。
「どうしたんですか?仕事人間の碧斗さんが、これを頼むなんて。最近来られなかった事と何か関係が?」
「…うるさい。ほっとけ。」
「…すみません。でも、今日はいつものお部屋は空いていないですよ?」
俺がこの酒を頼むときは、
必ず女と寝る時だと分かっているシンは、いつも決まったホテルの部屋を取っておいてくれるのだが、
今日はいつも泊まる週末とは違う。
明日の仕事に支障が出ると分かってはいるが、
今日ばかりは、そんなことどうでもいい。
一刻も早く忘れたくて、
BARに偶然居合わせた1人の女を誘い、
いつもとは違う部屋で、一夜を過ごした。