家政婦だって、恋したい
ー次の日、碧斗さんは6日ぶりに帰ってきた。
「…まだ居たんだな。」
玄関で出迎えた私に対して、開口一番呟いたのは、そんな言葉だった。
それでも私は、聞こえていないフリをして笑顔で迎える。
「碧斗さん、ご飯にされますか?」
いつも通りに接しようと努めるが、気を緩めると泣いてしまいそうだ。
「…要らない。なんでお前まだいんの?」
碧斗さんは、私を恨めしそうに見つめている。
「なんでって…まだ契約は継続されていますから…。」
『契約』
そんな言葉を出したい訳ではなかった。
この状況下で碧斗さんの側に居るためには、
最初に碧斗さんが言った、"道具以下"の関係を提示する他ないと思ったのだ。
「…」
碧斗さんは何やら考え込んでいるのか、私から目を逸らし無言になる。
「私はあなたの家政婦です。何があろうと、お側に居ます。」
私は精一杯、側に居たい想いを込めて言った。