家政婦だって、恋したい
「・・・俺の機嫌を取ろうとするのも、『契約』の内なんだな。」
私は言い返したい想いを押し込めて、ぐっと唇を噛み締める。
「俺の健康を心配して色々やるのも、笑いかけるのも、全て『契約』なんだな。」
「・・・」
違う、そうじゃない。
『契約』なんかじゃない。
私は、家政婦だからあなたに尽くしているわけじゃない。
あなたが好きだから・・・
今、そう言えたらどんなに良いだろうか。
好きって言いたいのに、側に居られなくなることを思うと、どうしても言葉に出来ない。
「・・・クソッ。」
言い返さない私に苛立っている碧斗さんは、壁を思いっきり殴り付けると、
私を素通りしてリビングへと向かっていった。
私はその後ろ姿を追うように、リビングへと重たい足を進める。