家政婦だって、恋したい



『契約の終了』

聞きたくなかった言葉が自分の中で木霊する。



「…どうして、ですか?私…碧斗さんに何かしてしまいましたか…?」

今にも泣き出しそうになる気持ちを押し込めながら、私は精一杯問うた。

「…」


だけど、碧斗さんは答えようとはせず、

ペットボトルの水を持って部屋を出て行った。




「…どうして…」

私はその場に立っていることが出来ず、膝から崩れ落ちる。


数分の間、魂が抜けた様にぼーっとしていた私は、次第に目に涙が溜まってきた。

「…うっ…うぅ…」

このまま、狂った様に大声をあげて泣き叫びたい。

でももうこの場所は、私には関係のない場所。


ここで泣いたら駄目だと自分を奮い立たせ、

急いで部屋から貴重品だけ手に取り、

碧斗さんの部屋の前で深くお辞儀をして、


3ヵ月と10日間お世話になったマンションを出て行った。







< 224 / 278 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop