家政婦だって、恋したい
『契約の終了』
聞きたくなかった言葉が自分の中で木霊する。
「…どうして、ですか?私…碧斗さんに何かしてしまいましたか…?」
今にも泣き出しそうになる気持ちを押し込めながら、私は精一杯問うた。
「…」
だけど、碧斗さんは答えようとはせず、
ペットボトルの水を持って部屋を出て行った。
「…どうして…」
私はその場に立っていることが出来ず、膝から崩れ落ちる。
数分の間、魂が抜けた様にぼーっとしていた私は、次第に目に涙が溜まってきた。
「…うっ…うぅ…」
このまま、狂った様に大声をあげて泣き叫びたい。
でももうこの場所は、私には関係のない場所。
ここで泣いたら駄目だと自分を奮い立たせ、
急いで部屋から貴重品だけ手に取り、
碧斗さんの部屋の前で深くお辞儀をして、
3ヵ月と10日間お世話になったマンションを出て行った。