家政婦だって、恋したい
謝罪と許し
ー碧斗sideー
2月も中頃。
俺は今、彼女の墓地の前で佇んでいた。
14年前に彼女が死んでからずっと、この日になると必ずここへ来ていた。
数日前に誰かが供えたであろう枯れかかっている花を、今自分が持ってきた物と入れ替え、
墓の前で手を合わせ、帰ろうと来た道へと体を向ける。
すると、花束を抱えてこちらへ来る、50代くらいの女性と目が合った。
俺は会釈をし、その女性を通り過ぎようと横に並んだ瞬間、
「待って!」
という女性の声で足を止め、振り返った。
「碧斗くん、でしょ?娘と付き合っていた。」
”娘と付き合っていた”
その言葉で、目の前の女性が誰なのか悟る。
「…少しお話よろしいかしら?」
俺はコクンと頷く。
14年間、後ろめたさから彼女の両親とは会わない様にしていた。
最後に会ったのは、彼女の葬式以来だった。