家政婦だって、恋したい



手紙を読み終わると、そっとハンカチを差し出された。

自分の頬を触ると、無意識に俺は泣いていた。



「…正直、ずっと貴方の事を恨んでいたの。娘は、貴方のファンの子が虐めていた所為で命を絶ってしまった。だから貴方も、ファンの子たちも許せなかったの…」

言う事は最もだ。

元はといえば、俺に好意を持ったやつらが虐めていたことがきっかけだ。

そして俺は、当事者のくせに助けるどころか、気づいてすらやれなかったのだから。


「…だけど、あの子は誰ひとり恨んでいないのよ。『自分以外にやらなければそれでいい』って言う優しい子なの。あの子が私たちに『恨まないで』とお願いするのだから…私はもう、憎む事をやめることにしたの。」

彼女の母親を見ると、苦しそうだけれど、確かに微笑んでいた。


「碧斗くん…毎年、娘の命日に会いに来てくれてありがとう。今までは憎くて、気づいていたのにお礼すら言えなかったけれど、その表情を見る限り、貴方もずっと苦しんでいたのね。」




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