家政婦だって、恋したい
「…俺なんて何も…」
「もう十分、貴方は娘を想って苦しんでくれていた。私たちはそれで満足よ。…もう、自分を許してあげて?」
”自分を許す”
本当にそれでいいのだろうか。
俺は何も彼女にしてあげていないというのに。
ふと、
開いたまま手に握られていた手紙の、最後の部分が目に入る。
彼女は誰も恨みたくない、恨んで欲しくないと言う。
俺自身も…
「…俺は、彼女に何もしてやれなかったんです。何も…」
「…ありがとう、娘をそんなに想ってくれて。娘は幸せ者ね。…今度は、碧斗くんが幸せになる番よ。」
そう言うと、包み込む様に俺の手を握ってくれた。
その手がとても暖かくて、頑なだった心が解れていく気がした。