家政婦だって、恋したい
そう、緑花は、
自身のファッションデザイナーとしての本領を発揮するべく、
ゆうくんの力添えのもと、私を朝から拉致し、
今現在、私のために仕立て上げた華やかな衣装たちを選定中なのだ。
「…それにしても驚きました。拓哉さんと麗奈さんがご婚約だなんて。」
「ごめんね、驚かせたよね。実は俺たち、許嫁だったんだ。金麗花も再出発したし、そろそろ腰を落ち着けてもいいんじゃないかと思ってね。」
「そうだったんですね。驚きましたけど、お似合いだと思います。」
真剣にドレスたちに目を遣る緑花を余所に、私たちの間には穏やかな空気が漂う。
ここに碧斗さんが居てくれたら…
そんな事を、未だに思ってしまう私は可笑しいのかもしれない。
あんなに拒絶されても尚、
碧斗さんと過ごした日々が大切で、失くしたくないだなんて。