家政婦だって、恋したい
「え?」
何が起こったのか分からなくて、
碧斗さんに掴まれた腕と碧斗さんを、交互に見つめてしまう。
「…来て。」
私の返事などお構いなしに、碧斗さんは私の腕を掴んだまま歩き出す。
そしてそのまま、パーティ会場を出たかと思うと、正面にあったエレベーターに乗り込んで、29階のボタンを押してしまった。
エレベーターの中に入っても、碧斗さんは私の腕を離そうとはしない。
29階までが凄く長く感じる。
意味もなく、階数の表示盤をじっと見つめているが、心臓はドキドキしっぱなしだ。
やっと29階に着くと、
碧斗さんは再び私の腕を引き、すぐ近くの2901号室の扉の前で足を止めた。
流石に部屋に入るには抵抗があったので、引かれていた腕に力を入れてみる。
「…結衣、話がしたい。誓って手は出さないから…頼む。」
懇願するように、碧斗さんは私に言った。