家政婦だって、恋したい
「碧斗が溜息なんて、珍しいな。」
声がして顔を向けると、そこには、俺と1つ上の従兄弟で、秘書の藤崎拓哉(ふじさきたくや)が、社長室の扉に背を預けて佇んでいた。
「…疲れているらしい。」
「そうだな。ここんとこ、お前は詰め込みすぎだ。新しく出来る旅館の事を考えるのも良いが、もう少し自分の身体を労れよ。」
「…ああ。」
俺は軽く返事をするしか出来なかった。
今日は、新しく金沢に出来る、旅館の最終段階で忙しく、昼食を取る暇さえなかった俺。
昨日もほぼ徹夜で、ここの所3時間程しか眠れず、既に身体は限界だった。