家政婦だって、恋したい
―碧斗side―
「な、何するんですか…」
キスで腰を抜かした結衣は、必死に近くのシンクの縁を掴み、立ち上がろうと試みているようだが、
生まれたての小鹿のようにヨロヨロとしていて、実に滑稽だ。
俺は笑いたいのを堪えながら、落ちていた水のペットボトルを拾い、結衣を見下ろす。
「何って、キスだけど?」
「そ、そんな事は分かってますっ!何でキスなんかするんですかって聞いているんですっ!」
俺の態度に腹を立てた結衣が、目を真っ赤にして俺を睨む。
その表情を見ると、苛めたくてゾクッとする。