家政婦だって、恋したい
嘘の恋人

―結衣side―







「結衣ちゃん、疲れてない?」

「はい、大丈夫です。」

私は、隣でハンドルを握る拓哉さんに微笑む。


「…おい、何で俺には聞かないんだ。」

私たちの後ろで、碧斗さんがムスッとしている。

「碧斗はずっと寝てただろ?」

拓哉さんは、ミラー越しに碧斗さんの表情を見ながら答えた。


「…寝てても疲れる」

「おいおい、一番疲れてるのは、運転している俺だよっ!」

私は、二人のじゃれあいの会話を聞きながら、クスクスと笑った。





私たちは、
拓哉さんの運転で、昨日完成した旅館『金麗花(きんれいか)』に向かっている。



何故、私が此処にいるのか。




それは、昨日の夜に遡る―――



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