家政婦だって、恋したい



「それにしても、本当に素敵なところですね。」

まだお茶の入っている湯飲みを両手で包み、まじまじと部屋を見渡しながら結衣は言う。


「紅葉の景色も絶景ですし、これから冬になると雪見風呂も楽しめていいですね。」

そう言って、結衣は嘘のない笑顔を見せる。





結衣は、

俺に寄ってくるどの女とも違う。


媚びへつらうこともないし、

俺の事を本気で心配し、怒ったり笑ったりする。


それはきっと、

俺が結衣の雇い主で、
自分が俺にとって"道具以下"と、それ以上の関係にならないと理解しているが故だろう。





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