もしも、もしも、ね。
愚然-グウゼン-


「私・・・先輩のことが、す・・・好きですっ!!」



―――ん?


突然聞こえてきた声に、私はぱちっと目を開いた。


今私がいるのは屋上。

鍵がなければ入れない、立ち入り禁止の場所。

え?じゃ、なんでいるかって?

ふふふ。実は私、鍵を預かったときにこっそり合い鍵を作ったの。

おかげで、こうして好きなときに好きなだけここに侵入している。

私の一番好きな場所。

“優等生”とか“いい子”ってかぶり物を脱げる幸せと癒しの場所。


今はせーっかく放課後になって、

うっとうしい担任から逃げながら昼寝(夕方寝?)を満喫していたというのに。



今のって、いわゆる告白だよね?



私は軽い気持ちでフェンスから下を覗き込んだ。

茶色い髪と、右巻きのつむじが見える。

上から見るだけで身長が小さめだとか、髪が綺麗に巻かれてるとか、

そういうのが分かっちゃうから不思議なものだ。

とりあえず女の子はうちの学年じゃない。後輩かな?

あ、先輩って言ってたしそりゃそうか。



さーて。相手は誰なのかなぁ?



遊び半分の気持ちで相手、男に視線を移す。

そして、「げ」。

相手が誰か分かった瞬間、私は顔をしかめた。



篠田裕哉(しのだ ゆうや)。

高校2年B組。私と同じクラス。

癪だけど認めざるを得ない芸能人のように整った顔立ち。

バスケ部ではエース。

成績は学年トップ3。

大人びた雰囲気。



名前を知らない人はいない、

女子生徒から人気ナンバー1と言われている、

いわゆる“モテ男”。

私はこいつが










だいっきらいだ。


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