もしも、もしも、ね。

「ま、以上で決定でーす!」



みんな、なりきれるように頑張ってね。

ハートマークを付ける勢いで、望果はそう言ってのけた。

この微妙な空気の中でのほほんとしている望果は最強だと思う。

いつかのカリスマ性云々の話、認めてあげてもいいかなー。なんて古い話を持ち出したりしてみて。



それからちらり、と視線を横に投げる。

荒川さん悔しそう・・・ホント、変わってあげてもいいのにな。

でも荒川さんはホステス班だからちょっと無理。(それなら姫の方がマシだっての!)



「じゃぁ、今から衣装配っていきまーす!」



その言葉に、一斉にざわつき出す教室。

前に山積みにしてあった段ボールにはどうやら衣装が詰まっていたらしい。

それを開けて望果が腕を突っ込み、引き出す。

その腕に抱えられた色とりどりの衣服に「うわぁ!」と教室中が歓声を上げた。

HR中ずっとついていた頬杖から思わず体を上げ、その目を奪う鮮やかな布を私も見つめた。


順番に配られて行く洋服。

手にした人たちは、自分の身体に当てたり交換してみたり楽しそうだ。



「ちょっと、作り直せないんだから壊さないでよー?」

「望果、これかなり大きくないー?」

「詰めるのは自分でやってー。」



まぁ、大きいのは小さくできるけど、小さいのは大きく出来ないよね?その辺りどうするんだろ。

よくよく見れば、男の子なのにメイド服を渡されたりしている人もいる。

(枚数が男女比ずれてたんだろな)

(あの顔面蒼白ぶりは素晴らしいと思う不謹慎な私。)



そんな様子を眺めながらしばらく待っていると、



「あーかり!どう?上手く行ったでしょ?」

「最悪の方向になら上手く運ばれたけどね。」

「ありゃりゃ。」



楽しそうな笑顔で私の元に望果は寄ってきた。

私の睨みになんて負けやしない。


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