もしも、もしも、ね。
「はい、これ白雪姫!」
「意外とシンプル。」
よかった、と胸をなで下ろす。
正直ディズニーや絵本の姫を想像していたものだから、白ベースのシンプルな形のドレスに、思わず笑みが漏れた。
「暁里に着せるのに、派手なのしたら嫌がられるじゃん?」
その言葉に私はため息をつく。
「あんたやっぱり・・・」と呟いたら、墓穴に気付いたらしい。
望果は「あ」と口を押さえて、それから「はは」と誤魔化すように苦笑した。
私に着せる=最初から白雪姫は私。
その等式は誰でも簡単に想像付くことに、彼女はやっと気付いたらしい。
望果はひとしきり笑った後、ちょいちょいと人差し指を曲げた。
「それはそうとさ、暁里耳貸して?」
「アンタ、まだ配らなきゃいけないんじゃないの?」
「いーから!」
あまりにも望果が必死そうだから、私は素直に頬杖をつきなおしながら耳を望果に向ける。
そっと彼女の手がもみあげらへんに触れてくすぐったかった。
「本当はね、みんなわかってたんだよ。あたしがズルしたって。」
「は!?」
ま、あれでわかんなかったなら大問題だけど。
驚いて顔を離してしまった私を、柔らかい表情で望果は見て、ひょいひょいとまた手招きした。
私も耳を望果に近づけてさっきの体勢に戻る。
「荒川さんのグループ以外はね、女の子も男の子もみーんな暁里の味方なの。」
「・・・。」
「暁里と裕哉君がぎこちないの気付いてて、元に戻そうってこの間相談したんだよ。」
それが、この方法だと?
視線を望果に向けると、彼女はにっこりと笑った。
私とユウにあみだの場所を指示した企んだ笑顔でもなく、
発表したときのにやりと言う嫌な笑顔でもなく、
ここに向かってくるときの至極楽しそうな笑顔でもなく、
満足そうに、嬉しそうに、ふんわりと、 笑った 。