もしも、もしも、ね。


そして言いにくそうに頭を掻いて、口を開いた。



「いや、ただ偶然居合わせた桜野を巻き込んだのは、さすがに悪いと思ってるよ?」

「うん。偶然にも偶然だし、謝られないとしたらそれはそれで割に合わないけど続きは何?」

「お前なぁ。」



私の返答に篠田は呆れたように肩を落とした。

でもすぐに「そりゃそうか」と背筋を伸ばす。



「だからさ、付き合ってくれない?」

「は?あんた私のこと何とも思ってな―――「嘘で。」・・・・・は?」



私の声を遮って放たれた篠田の言葉。

嘘で?

それって「嘘でお付き合い」、ってことなの?

きょとんと瞬きしつつ篠田を見つめれば、篠田は顔を背けた。



「逃げるためとは言え、お前のこと彼女だって言っちゃったじゃん?」

「うん。そっからもう嘘始まってるよね。」

「それで、もし違うって言えば俺は嘘つきになるだろ?」

「自業自得じゃないの?」



私の冷めた視線に篠田は口をつぐんだ。

え?私冷たい?そんなことないよね?

だってさ、どんなにモテてたって嫌いな相手に付き合える?

しかも嘘でなんて!

女をバカにしてるのか?ってついつい思っちゃうのも無理はないでしょ?

プラスして有名なモテ男。

こいつの目に「女は全部じゃがいも」って写ってるんじゃないかって思う私は、悪い女なの?



「頼むよ。」

「い・や。」



強気に答えながら篠田を見ると、眉の下がった篠田の顔。

なぜか私は「う」と口を閉じた。

ちょっとちょっと。

あれ?ここは時代に乗っ取って「ちょっと、ちょっとちょっと。」の方がいいのかな?

ザ・たっちさん、お借りします。




・・・じゃなくて!!!

なんで私が罪悪感感じなきゃいけないのよ!!!


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