もしも、もしも、ね。
「うるさいんだけど。」
気付いたら頭より先に、口が動いた。
思いの外に、声が響く。はっきりと。
シン、と教室は水を打ったように静まり返ったけれど、別に怖くなんてなかった。
「なんだよ、桜野。」
「何ムキになってんだよー。私のユウを苛めないでッ!てか?」
わざわざ裏声を使って一人が言うと、周りが下卑た笑い声を上げる。
それに私のイライラは募った。
「自分が嫌だったら人責める。
泣かれたら逃げる。また別の人に責任転嫁する。
思い通りに行かなかったらやめる。
正論を言われたら話題を変えてからかう。
貴方達小学生?真面目にやってる私たち迷惑なんだけど。」
勝手に口が動く。
この感じ・・・あぁ、荒川さんと買い物から帰ってきたユウと喋ってる時にすごく似てる。
隣で望果が「暁里がキレたぁ」と呟いたのが聞こえた。
これが、所謂“キレてる”?
―――荒川さんと仲良くしてたユウに・・・私、“キレて”た?
キレてたって、怒ってたってこと?荒川さんとユウが一緒にいることに?
私、ユウ嫌いなのに?
口と反対に、頭は冷静に別のことを考えてた。
面食らったように目を見開いた後、少なからず不機嫌そうな表情をし出す彼らを冷ややかに見つめて口を開き続ける。
「貴方達なんかした?
望果みたいに会議に参加して、毎日帰宅8時なんてやってた?
准君みたいに、自分の大切な時間裂いてまでクラスに参加してた?
ユウと荒川さんみたいに買い物行って、クラスメートのために必死に何か考えた?」
すとん、という軽い音と共にロッカーから下りる。
上履きを履きながらでも、私の口は止まることを知らない。