もしも、もしも、ね。


違う方向にしようとすること、

そしてみんなで新しいデザインを考えること、

というわけで、教室は一斉にまた活気を取り戻した。

私も満足して仕事に戻ろうとする・・・と。



「桜野さん。」

「ん?」

「―――・・・ありがとう。」



視線を反らしながらの、荒川さんのお礼。

予想外 で、ちょっとびっくりした。



「なんで?」

「だって、買ってきたの私だし。

フォローしてくれて助かった。それだけッ。」



「もう一回お礼は言わないから。」と顔を背ける荒川さん。

吐き捨てるような言い方は、きっと恥ずかしいから。

かわいいとこあるんだ、と思わずクスクス笑うと「なによ。」と赤い顔して睨まれた。

それが迫力無くて、また笑える。

それに腹が立ったのか定かではないけれど、荒川さんは腕を組んで「ふん」と鼻を鳴らした。



「でも、言っておくけど裕哉と買い物行ったことは謝らないわよ。」

「いいよ、謝られることされたとも思ってないし。」



別に悩みもせずに反射で答えると、

荒川さんは私を睨み付けたまま眉をひそめてため息をついた。



「―――桜野さんって本当に変な人。」

「そう?」

「普通あんなモテる人が彼氏でさ、自慢したりしないの?

可愛くなろうとか、取られるんじゃないかって不安になったりとか、しないの?」



しない。私はきっぱりと一刀両断した。

ユウは自慢出来る人か知らないし、(しようにもするところがわからない)

嫌いな人のために努力しようなんて思わないし、

本物じゃないから取られるもヘったくれもないし。


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