もしも、もしも、ね。
「ちょっと桜野。何百面相してんだよ。」
「お前のせいだ、お前の!!」
「はぁ?」
無自覚かい。
あんたが私の行動左右してるの、思いっっっきり無自覚かい。
遠慮せずに突っ込んだ私の言葉は、あっさりとスルー。
だって、動揺しないわけがないじゃない。
私の気持ちを知るよしもない篠田は「何言ってるんだ?」と言わんばかりの表情に顔を歪めた。
「んでさ、お願い。桜野!」
パンッと音を立てて合わさる手のひら。
そこに当たる額と閉じられる瞳。下がる頭。
うわ、この男が私に頭を下げてる・・・じゃなくて。
「―――どうしてそこまでするのよ。」
「え?」
「どうして、そうまでして嘘を突き通したいわけ?」
そんなに嘘つきになりたくないの?(まぁ、それは嫌だろうけど)
私の問いに、篠田は視線を揺らした。
目が泳ぐ。
口が数回開閉する。
何か裏があるのかな?
私が視線で解答を待っていると、突然その視線がかみ合った。
そして右手の人差し指を立てながら一言。
「じゃぁ、こうしない?」
「は?」
え?なんの提案なわけ?
っていうか、話反らしすぎでしょ。
が、(今までもそうだったけど、やっぱり相変わらず)私の反応を見もせずに篠田の口を動いた。
「もし、教室に戻って、俺たちの話が広まってたら付き合う。
誰も知らないままだったら、付き合わない。」
「賭けね。」
「おもしろいだろ?」
ついでに公平だし。
そう言って、篠田はにっこりと笑った。