もしも、もしも、ね。
「それでさ、思い返したわけ。今までの私はどうしてたかなって。」
そう続けたら、ユウは優しい瞳で私を見た。
んで、「どうしてたの?」なんて聞く声まで優しくて。
なんだかユウがユウじゃないみたい。
私が私じゃないみたい。
私はユウを直視出来ないまま、言葉だけを続けた。
「どうしていたのか、じゃない。どうもしていなかったんだ。
思い出せない、んじゃない。思い出すことがないんだ。
そう、気付いたの。」
「・・・。」
「でも、今は違う・・・気がする。
10年後、20年後、おばあちゃんになったとき。
思い返したとき、“今”はちゃんと思い出せると思う。」
それで、
「それで、たぶん、そうなった理由はアンタだと思ってる。」
「俺?」
「アンタのおかげで、私ムカつくだとかキレるだとかウザいだとか、そういう気持ち覚えたから。」
そう言ったら、「それ、けなされてる気がする。」とユウは大きくため息をついた。
なんだか頭を下げた気配がしたから視線を向けたら、確かにユウは頭を抱えてて。
私が「そう?」と言ったら、前髪の奥から「そうだよ」と低い声が聞こえた。
―――・・・あ。
その様子を見ていたら、なんだかこう・・・国語が得意な私でも形容できない不思議な感情が、こみ上げてきて。
私の口は、まるで教室のときのように勝手に動いたのだ。
「でも、私、これでも感謝してるんだよ?」
なん、て。