もしも、もしも、ね。


「裕哉ー!暁里ー!俺ら帰るけど一緒に帰らね?」



突然屋上に響き渡る声。

驚いて振り返れば、満面の笑顔で手を振る准君と望果。

「準備は?」とユウが聞くと、「明日朝6:30集合」と望果が答えて、

思わず「げ」と呟くユウにクスリと笑みが漏れる。



ユウと目が合う。

しばらく無言でいて、それから



「―――帰るだろ?」



そう、ユウは柔らかく目を細めた。

まるで魔法に掛けられたように、私は思考を働かせることなくゆっくりと頷く。

「素直素直」と口角を上げながら、ユウがぐしゃりと私の頭を撫でた。

魔法に掛かった私は、その手を払わなかった。



「仲直り、出来たんだ?」



望果から鞄とコートを受取りながら聞かれた言葉に、微笑む。

仲直り、と言った感じの仲直りはしてないけれど、それでも壁はなくなったから。

―――今回の件に関しては、だけどね。

「よかったぁ」と顔を見合わせて笑う望果と准君を見たら、またツキンと胸が痛んだ。



嬉しさとモヤモヤが同時に住んでる心が気持ち悪い。

楽しければ楽しいほど、

嬉しければ嬉しいほど、

世界がキラキラして見えるほど、

私の心はどんどんと重くなっていく。

「ユウごときのためにどうしてこんな気持ち持たなきゃいけないのよ!」って、

思えない私が、そこに いて。

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