もしも、もしも、ね。
そんな優しい瞳向けちゃだめだよ。ユウ。
私なんかに幸せ願っちゃだめだよ。望果。
明るく話しかけてきちゃだめだよ。准君。
大嫌いなのに彼女を演じることはユウへの嘘。
ごめんねをありがとうにすり替える、望果への嘘。
准君が守ってくれる“私”も、嘘。
クラスメートも・・・私なんかの、私の嘘なんかのために一生懸命で。
ごめんね、じゃ済まされない嘘の固まりの私は、
鉛を飲んだような重さを胸に抱えながら、
過去という名前の錘(おもり)を足に括り付けて、
必死に笑顔を塗り固めて、深く深く沈んで溺れた。
初めて、こんなにも沈んだ。
溺れるということを、初めて知った。
力を抜けば浮くなんて、
手を伸ばせば引っ張ってくれるなんて、
私は知らずに。
笑顔の奥。私はただただ深い底を見ていた。