もしも、もしも、ね。
女の子が騒ぐ訳だ、と納得しそうな綺麗な微笑みから慌てて顔をそらして時計を見る。
さっき、告白していた時間からまだ十五分くらい。
今は放課後。帰宅部の子は帰ってるだろうし、残りは部活でしょ?
ともすれば、教室にいる人数はきっと少ない。
ただでさえ、広まりやすい条件は満たしていない。
プラスしてあの子は後輩。
どうやって私たちのクラスに噂が広まるだろうか。
うん、どうせ付き合わないことになるんだろうな。
「いいよ、仕方ないし。賭けぐらい乗ってあげるよ。」
「マジで!?」
篠田の顔が輝いた。
思わず私は眉間に皺を寄せる。
篠田だってバカじゃない。ううん、むしろすごい頭は良い方。
私が考えたこの「広まってるわけがない」っていう考えくらい、篠田だって思いつくでしょう?
ねぇ、なのにどうして?
どうしてあんたそんなに嬉しそうなの?
私の勝ちは決まったようなものなのに。
どうしてあんた鼻歌なんて歌ってるの?
あんたの頼み、聞かないことになるんだよ?
そう。
私、確信してた。
“コイツと、付き合うわけがないんだ。”って。
嘘でも、本当でも。未来永劫、コイツとなんて、絶対―――
なんでそんな頑ななのか。
そんなの、私にだってわかんなかった。
ただ、わかるのは。
これが、すべての始まりだったってことだけ。