もしも、もしも、ね。
「あーあ。大変なことになってるねぇ。」
ふ、とドアからそんな声が聞こえた。
顔を上げれば、そこにいたのはみぃで。
真っ黒なパーティードレスを見て首を傾げれば、「次ホステス組なのよ。」と鼻で笑われた。
なんだその笑顔は。
そんなこともわからないのか、この女。って意味か。
「ほら、これ貸して。」
疲れと忙しさで生まれた卑屈さを込めつつ
バカにされた・・・とみぃを睨みつけていると、
彼女は私のポケットからオーダー表を取り上げた。
「え?」
「この衣装なら、まぁ魔法使い役程度にはなれるでしょ。」
「・・・。」
「いなかったでしょ?魔法使い役。」
一瞬よくわからなかったけれど、すぐにホールを手伝ってくれようとしてるんだって気付いた。
「ありがとう、みぃ。」
「うるさいわね、裕哉を少しでも見てたいだけよ。」
それに悪い虫がつかないように気をつけなきゃだし、掃除なんて似合わないものやりたくないし、借り作ったままなのも嫌だし、
とあからさまな言い訳を重ねるみぃに、思わず噴き出した。
みぃは真っ赤になって、「さっさとやるわよ」とセットされた私の頭をどつく。
この子、ツンデレか。
「感謝するよ。」
「だーかーらー!!・・・!!!」
追い討ちを掛けて言う私に、みぃは怒った顔をして振り返る。
そして、私の頭、のその奥を通り抜けて見て。
目を見開いた。
え?と思って振り返る。
けれど、そこには何も無くて。