もしも、もしも、ね。
「大丈夫だよ、暁里。」
「はぁ?」
また笑い声が聞こえた後、言われたのはそんなことば。
また顔をゆがめながら振り返ると、
彼は清清しい笑顔で、
「俺、今日1位だったから。」
と言った。
口の端が、ピクリと引きつる。
この男は、どうしてこうも嫌みっぽいのだろう。
私は、本当に幸せが逃げそうな深いため息をつきながら、言葉を返す。
「―――それで?何が大丈夫なわけ?」
「俺といれば、プラマイゼロくらいにはなるだろ?」
間髪入れずに返って来た言葉。
私は思わず、目を瞬かせた。
「一人よりは、マシじゃね?」
たまには利用しろよ。
そう言って、ユウは視線を私に向けた。
その目は、いたずらに成功した小学生のようにキラキラしていて、
そんな顔出来るんだと思ったら、まぶしくて目を逸らした。
「大丈夫って・・・」
「え?」
「“大丈夫”って言葉、私のことだったんだ。
私てっきり、“自分が大丈夫”って意味かと思った。」
そう言ったら、視界の端で今度はユウの顔が歪む。
それから頭を掻いて、
「俺って暁里の中でそんな自己中なキャラなわけ?」
なんてあきれたように言われた。
自己中も何も、最悪の人間だけど。
そんなことを言えるはずもなく、「さぁ?」と笑顔を見せた。
それで顔を引きつらせるユウ。立場逆転。