もしも、もしも、ね。
「こんなに笑ったのいつぶりかな。」
目に浮かんだ涙を拭いながらユウを見る。
ユウは、「少なくとも俺は初めて見た。」と言って私の頭にポンと手を置いた。
その、瞬間。
身体中がはっと覚醒して、私は我に返った。
「触らないで。」
「あ、悪ぃ。」
パンッと思い切り手を払ってしまった。
今、私―――
私、ユウ相手にこんなに―――
払った手を自分でぎゅっと握る。
「おやぁ、痴話喧嘩ですかぁー?」
「!」
聞きなれた高い声が飛び込んできて、私はバッと振り返った。
そして、「ぷっ」と噴き出す。
一昔前の瓶底メガネに、わざとらしいぐるぐるマークが黒で描かれたメガネをかけた望果がそこに立っていたから。
「・・・何それ。」
「ズバリ景品でしょう!」
それじゃぁちびまる子ちゃんの丸尾君でしょうが。
クイッとメガネのふちを人差し指と中指で持ち上げる望果に軽くチョップ。
「えへへー」といつもの笑い方をした彼女は、
そのメガネを頭の上にかけた。
セレブがサングラスをそうすればかっこいいのだろうが、
望果のそれはマッドサイエンティストのファッションだ。
(白衣着せたい・・・)