もしも、もしも、ね。
口はぱくぱくしてるし。
目は白黒してるし。
なんかすっごい間抜けな行動してるのはわかってる。
でもどうしてもついていけなくて。
「っていうわけなんで。」
突然、誰かが後ろから私の襟を掴んだ。
声からして、たぶん篠田。
あ、違うよ?今発した声じゃなくて、回りがキャーと叫んだ声からね。
(目線を上げればやっぱり篠田でした。)
「俺達、ちょっと席はずすな。」
「はいは〜い。ごゆっくりいってらっしゃーい。」
篠田は襟を掴んだままずるずると引きずり出した。
え?後ろ向き怖いって。バランス取れないって。首締まるって!
ヘルプを頼むように望果を見たけど、
彼女を筆頭に笑顔でクラス中から手を振られた。
こんな一瞬でなんのために教室来たんだ、とか疑問に思ってくれないの!?
やだやだやだやだやだやだやだぁぁぁぁぁぁぁっ!!!
ちょ、ちょっと!
なんか黒い羽が見える!!なんか黒い角が見える!!!
なんか悪魔がいっぱいなんですけどぉぉぉっ!!
―――かくして、私は篠田に拉致られました。
え?どうしてこんなに嫌がってるかって?
だって、賭けは篠田が勝ったんだから。
ここで着いて行っちゃったら、賭けの景品・・・すなわち私たちの「嘘」が確定することになっちゃう。
今ならまだ逃げられるのに!はぐらかされるのに!!
バスケ部の腕力強すぎるのよ〜〜〜ッ!!
もちろん、私の抵抗なんて無駄でした。
(「え?抵抗してたの?」なんて言われたほどにね。)