もしも、もしも、ね。


「ごめん、やっぱり私帰る。」



一度は言った言葉だったけれど、今度は誰も引き止めなかった。

私のただならぬ状態を察してくれてるのだろうか。

私は返事も聞かずに踵を返した。

なのに。



「俺、送ってく。」

「いいよ。タダ券あるんでしょ。」

「別にそんなの明日でもいいだろ。」



更衣室に置きっぱなしのカバンをとりに行こうとする私。

なのに、何故かユウは隣に着いてくる。

望果と准君はもう着いてこない。

いつもみたいに私を放っておいて欲しい。

どうしてこの人はこういう時に限って構ってくるのだろう。



「―――ごめん、一人にして欲しいの。」

「やだ。」

「やだって、子供じゃないんだからさ。」

「仕方ねぇじゃん。一人にしたくねぇんだからさ。」

「ッ・・・」



意味が、わからない。

私は立ち止まって、ぐっと唇を噛みながらユウを睨む。

彼は同じように立ち止まったけれど、表情一つ変えずに口を開いた。



「一人にしたいってお前のわがままばっか聞く理由はねぇだろ。

お前が、俺の一人にしたくないってわがままを鵜呑みにする理由がねぇように。」



ユウの言うことは最もだ。

けれど、なんだか無理矢理言いくるめられてる気もする。

なんとなく、ユウと付き合うきっかけになったあの日のトーンに、似ていて。

私に反抗する手立てがないのも同じで。



「このKY。」

「はいはい。」

「デリカシー皆無男。」

「言ってろ。」

「バカ。アホ。ドジ。マヌケ。スケベ。変態。役立たず。」

「さすがに怒るぞ。」



結局ユウと過ごすことになってしまった。

なんとなく癪だから、更衣室までずっと文句を言ってやった。

(この後も延々続けていたら、さすがに頭を殴られた)


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