もしも、もしも、ね。


私は空を見上げながら、少しだけ後ずさる。

背に、ドアが当たって、金属の冷たさに体が冷える。

そのまま、ずるずるとしゃがみこんだ。



「どんな?」



ドアの向こうから声が聞こえた。

なんとなくだけど、ユウもドアによっかかっている気がした。

金属を一枚はさんで、私とユウは支えあっていたのだろう。



「陸斗は。」



少しだけ、言うのに戸惑った。

それは、私がユウを、篠田を嫌いな理由の一つだから。

自分の過去に重ね合わせるなんて失礼だとわかっていても、

トラウマというものは消えるものではない。

でもそんな自分勝手な理由、ユウは理解してくれるのだろうか。



「―――アイツは?」



急かす、ユウの声。

それにハッと我に返る。

どうしてユウの理解など求めるのだろう。

そんなもの、要りはしないのに。



「陸斗は、学校で人気ある男の子だったの。」



頭の中で割り切っていたのに、強く言おうとしたのに。

私の声は、震えてた。


< 157 / 299 >

この作品をシェア

pagetop