もしも、もしも、ね。
私は空を見上げながら、少しだけ後ずさる。
背に、ドアが当たって、金属の冷たさに体が冷える。
そのまま、ずるずるとしゃがみこんだ。
「どんな?」
ドアの向こうから声が聞こえた。
なんとなくだけど、ユウもドアによっかかっている気がした。
金属を一枚はさんで、私とユウは支えあっていたのだろう。
「陸斗は。」
少しだけ、言うのに戸惑った。
それは、私がユウを、篠田を嫌いな理由の一つだから。
自分の過去に重ね合わせるなんて失礼だとわかっていても、
トラウマというものは消えるものではない。
でもそんな自分勝手な理由、ユウは理解してくれるのだろうか。
「―――アイツは?」
急かす、ユウの声。
それにハッと我に返る。
どうしてユウの理解など求めるのだろう。
そんなもの、要りはしないのに。
「陸斗は、学校で人気ある男の子だったの。」
頭の中で割り切っていたのに、強く言おうとしたのに。
私の声は、震えてた。