もしも、もしも、ね。


私のバカ。

なんで言わせたんだ。



「お前が言わせたんだから、答えろよ。」



人の心を読むな、バカ篠田。

そう言いたいけれど、私の喉は音を出さない。

ううん、出せない。

私は自分の喉元を押さえながら、少しだけ考えた。



そう、私が篠田を嫌いな理由は陸斗に似ていたからだった。



篠田に近付きもせずに、決め付けた。

モテる男は女を泣かす。

外見がいい男は性格が悪い。

勉強が出来る男はプライドが高い。

スポーツが出来る男は自尊心が強い。

だって、あまりにも篠田は陸斗に似ていたから。

知りたくなかった、関わりたくなかった、近付きたくなかった。

最低な男だと思い込んでいた。

そんな男は大嫌いだった。



―――そんな、ただでさえ嫌いな篠田が、嘘の恋愛をさせるものだから。



それがまた、陸斗に似ていて。

私も嘘だと知っているだけ今回はマシだけれど、それでも私の心を掻き乱した。



でも、赤の他人と似ているだけで人を嫌う、なんて。

失礼なこと。

感情的なこと。

この私が、するなんて認めたくなくて。

何かこじつける理由があったはずだった。

嘘恋愛を始めるずっと前から、篠田を嫌う“篠田だけ”の理由があったはずだった。





それが、どうしても、思い出せなくて。


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