もしも、もしも、ね。


「他には?」

「ちょっと待ってよ、今考えてるんだから!」



何か。

何か、あったはず。

私が篠田を嫌いになったきっかけ。

こいつも陸斗と同じなんだと思ったきっかけ。



「―――暁里。」

「何?」

「ちょっとそこどけ。」

「は?」



私が頭を抱えていると、篠田に名前を呼ばれた。

そして命令された、意味のわからないこと。

私がマヌケな声で聞き返したら、「いいからどけって。」と強い口調。

仕方ないから、しぶしぶ腰を上げた。



「どいたか?」

「どいた。」



何なのよ、アンタは。

そう言おうとした私のことばは遮られる。

だって、篠田、普通にドア開けて入ってきたから。



「ちょ、ここ女子更衣室・・・ッ!!」



何やってんの!!?

そう言おうとした私の声をまた遮って、篠田はぐっと私の手を掴んだ。

どくん、とまた心臓が大きく跳ねる。


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