もしも、もしも、ね。
呼べるか!!
そう思って睨むが、篠田は引かない。
「嘘付くなら徹底してくれよ。な?頼むって。」
「・・・・・・やだ。」
「やだ、って小学生か。お前は。」
はぁ、と呆れたようなため息。
でも、“付き合うこと”と“名前を呼ぶこと”を天秤に掛けたら、
きっと“付き合うこと”の方がいや。
だけど“付き合うこと”はする。なのに“名前を呼ぶこと”はしない。
それって・・・おかしくない?
「仕方ない、か・・・。」
「お?呼んでくれるの?」
「うん。もうこうなったらヤケでしょ。よろしくね、ユウ。」
「ユウ?」
「うん、フルではやっぱり呼びたくないから。本物の彼女に呼んでもらいなね。」
ま、まだマシか。
そう言って篠田は、ううん、ユウはハハッと笑った。
名前で呼ぶようになったからかな?
その笑った低くて響く声に、その心からの笑顔に、ちょっとだけ胸がドキンと鳴った。
って何言ってんの。私はコイツが嫌いなんだから!!
「ユウ?」
「ん?」
「やるからには徹底するよ。それが私からユウへの約束。
でも、私からも一つ条件。」
何?とユウが首を傾げた。
一回大きく息を吸ってから、一言。
「私には触れないで。」
きょとんとユウは目を瞬かせる。
それから「うーん」と考える素振りを見せてから口を開いた。
「抱きしめるとか、キスするとか、それ以上とか?」
「うん。」
「ま、当たり前だけど。
じゃぁ手繋ぐのは?あとさっきみたいに襟掴むのとか。」
「ギリギリOK・・・?それぐらいはしないと、恋人ごっこ徹底できないし。
でも、出来れば回避してほしい。」