もしも、もしも、ね。


うちのゴミ捨て場は、旧校舎の裏と言うより、

正確には校舎のある地面から3段ほど段差を降りたところにある。

まぁ3段とは言っても、結構差があるんだけどね。うーん、1メートルくらい?

ここは、ただでさえ“旧”校舎。

その裏で人気どころか野良猫すらいない。

じめじめした空気。

そして高い段差(結構怖い)。

この学校において、ごみ捨ては掃除最大の罰ゲームなのだ。

コンクリートに囲まれるようにしてたくさん並ぶ青いポリバケツ。

私はその並びの奥にある水道で手を洗おうとしていた。



―――そのとき。



「ったぁいッ!!!」



視界に黒いものが過ぎったと思ったら、

それは一直線に思い切りわたしの頭にぶつかった。

思い切り硬い、“何か”が勢いをつけて。

女の子らしかぬ大絶叫を恥じるゆとりもなく、

私は頭を押さえてうずくまる。

涙で視界がぼやける中、

ポンポンと何かが弾む音がした。

一瞬過ぎったゴムの匂いとあわせれば、答えは予想が付く。

ジンジンした頭をさすりながら顔を上げれば、

やっぱりすぐ近くにあるバスケットボール。



「何なのよッ・・・!!」



ただでさえありえないくらい硬いのに、上から落ちてきて加速されたら痛いわよ!!

すぐに響く足音。

こちらに向かってるんだって分かって、私は犯人の顔を一目見てやろうと顔をあげた。



「ごめん、大丈夫?」



聞きなれた、低いよく通る声。

私は意味不明さの怒りと、取り残された怒りと、痛みの怒りと、

3乗を含めて怒鳴った。


< 173 / 299 >

この作品をシェア

pagetop