もしも、もしも、ね。
うちのゴミ捨て場は、旧校舎の裏と言うより、
正確には校舎のある地面から3段ほど段差を降りたところにある。
まぁ3段とは言っても、結構差があるんだけどね。うーん、1メートルくらい?
ここは、ただでさえ“旧”校舎。
その裏で人気どころか野良猫すらいない。
じめじめした空気。
そして高い段差(結構怖い)。
この学校において、ごみ捨ては掃除最大の罰ゲームなのだ。
コンクリートに囲まれるようにしてたくさん並ぶ青いポリバケツ。
私はその並びの奥にある水道で手を洗おうとしていた。
―――そのとき。
「ったぁいッ!!!」
視界に黒いものが過ぎったと思ったら、
それは一直線に思い切りわたしの頭にぶつかった。
思い切り硬い、“何か”が勢いをつけて。
女の子らしかぬ大絶叫を恥じるゆとりもなく、
私は頭を押さえてうずくまる。
涙で視界がぼやける中、
ポンポンと何かが弾む音がした。
一瞬過ぎったゴムの匂いとあわせれば、答えは予想が付く。
ジンジンした頭をさすりながら顔を上げれば、
やっぱりすぐ近くにあるバスケットボール。
「何なのよッ・・・!!」
ただでさえありえないくらい硬いのに、上から落ちてきて加速されたら痛いわよ!!
すぐに響く足音。
こちらに向かってるんだって分かって、私は犯人の顔を一目見てやろうと顔をあげた。
「ごめん、大丈夫?」
聞きなれた、低いよく通る声。
私は意味不明さの怒りと、取り残された怒りと、痛みの怒りと、
3乗を含めて怒鳴った。